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Thread (1096 ) -- ついに出ました!合成embryo!
No. 2272--べ. No. 2273--伊川.
No. 2272 (2017/03/02 08:56) べ

いや〜、いつだれが成功させるかなと思ってましたがついに出ました!

http://science.sciencemag.org/content/early/2017/03/01/science.aal1810?utm_campaign=fr_sci_2017-03-02&et_rid=17776251&et_cid=1194405

胎盤系とICM系は分化の最初(?)の岐路にあたります。ES細胞はICM系なのでES細胞単独では胎盤やyolk sacを持つembryoはできません。ES細胞からマウスを得るには本物のブラストシストにインジェクションする必要があるのはこのためです。

ES細胞とは別に胎盤系の幹細胞であるTS細胞(trophoblast stem cell)も報告されていましたのでこの両者を組み合わせると合成embryoと呼べるものが出来上がるはずです。ES細胞もTS細胞もほぼ無限に増殖させることができますから、この生命体も無限に作製可能になりまさにSFの世界が実現されたことになりますが、これまではアイデアだけで実現させた人はいませんでした。

今回ケンブリッジのZernicka-Goetzさんのラボからこの合成embryoが作製可能であるとScienceに報告されました。彼らはETS embryoと呼んでいます。

工夫は勿論、いまはやりの3D系の培養法です。ES細胞1つに対してTS細胞は小さな塊が結合するように混ぜて(ここのメソッドは詳しくは書かれていません)、マトリゲルに懸濁してプレートに撒くと37度でマトリゲルが固まってESとTS細胞同士が接着してお互いのクロストークを可能にすることでうまく発生が進むと書かれています。

ES細胞はDMEMで培養するのに対してTSはRPMIで培養しているのでマトリゲルに入れて両者を培養するときはどのようなメディウムを使用するのかは難しい問題です。彼らはDMEMとRPMIを混ぜるだけでなく、いろいろな添加物を追加しているようですがここにも工夫が必要だったのかもしれません。

この方法で出来上がるのはTS細胞がES細胞を包みこんだ形のブラストシストではありません。それよりもすこし進んだTSとESの塊が向き合って接合したE5.0あたりの着床胚の構造に似たものからスタートしてほとんど正常胚と似たembryogenesisを起こすみたいで、最終的にはE6.5当たりまでを再現させています。おそらくこの合成embryoでは着床時期の形を再現できないので上手く着床しないのだと思いますが、移植するというデータは載っていません。でもあと50年もすれば子宮のいらないreproductionが達成されると予想されるので、ブラストシストにならなくてもNo problemなのかもしれません。

とりあえずはこの方法を使えばembryogenesisのハイライトであるPGCの出現の様子などをin vitroの系で観察できることを示しています。PGCの発生に限らずマウスを使わずにembryogenesisを様々な方向から研究できることを示すことができたすばらしい論文だと思います。


No. 2273 (2017/03/03 02:22) 伊川

まだ読めてませんが、、、凄いですね! 私も実現したくて、帰国した15年くらい前に、Red ESとGreen ESを使ってトライしましたが、全く上手くいきませんでした。そもそも、もらったTSも自分で樹立したTSも胚盤胞インジェクションで胎盤に殆ど寄与しなかったので、諦めたのを覚えています。

やはり3D培養ですか。皆、同じことを考えていても99.99%が失敗してると思います。Zernicka-Goetzさん、凄いですね。

マイルストーンになる研究だと思います。次は誰が生ませることに成功するのか!? 夢のある研究ですね。


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