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Thread (1183 ) -- Spy 007と言う名の新兵器??
No. 2427--べ. No. 2428--山縣一夫.
No. 2427 (2023/07/07 11:42) べ

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37413989/

初期胚のイメージングといえば山縣さんの仕事が有名です。H2BにGFPを融合させたmRNAを胚に打ち込んでNipknowディスクを用いた蛍光顕微鏡で観察することにより悪影響を与えずに長期間にわたり胚の核の分裂を可視化しています。

今回のCellに発表された論文では山縣法よりもさらに非侵襲的なnjectionなしで、胚の核やアクチンの可視化を行っています。詳しいMethodはオンライン版で見ることができるそうですが私はアクセスできませんでした。方法としては単にSpyという名前の一連の蛍光色素をメディウムに入れるだけのようなのでだれでも追試できそうです。

ヒトとマウスの胚のコンパクション時期の違いとか、出生前診断などで細胞を剥ぎ取るなどの操作をするとそれが刺激になってDNAが核から細胞質内にbuddingするチャンスが増えるというようなことが書かれていました。

SpyはHoechstよりも毒性が弱いそうで24時間くらいの観察がOKだそうです。ネットで検索するとSpyのDNA検出色素には007という型番のものもありました。効きそうな感じです!アクチンやチューブリンなどが染まる色素もあるようです。SpermとSpyで検索したのですが見つかりませんでした。でもこのSpy色素は精子形成の研究などにも使えるような気がしました。

山縣さんの目から見てこのやり方はどうなんでしょう?時間があったらコメントしてください。


No. 2428 (2023/07/17 09:01) 山縣一夫

岡部さん

お声掛けを頂いてありがとうございます。 お返事、遅くなって申し訳ありません。 Sperm/eggは20年ぶりくらいの書き込みになるでしょうか。。。

当該の論文に目を通しました。 この論文は、Cytoskeleton社のSPYシリーズという蛍光プローブ(www.cytoskeleton.com/live-cell-reagents/spirochrome/spirochrome-spy-probes)を用いて、マウス胚やヒト胚のDNAやFアクチンのlive-cell imagingを行っています。筆者らは、この蛍光プローブの毒性の低さを、添加したマウス胚の卵割の時間や、移植による産仔率によって証明しています。その後、例えばコンパクション時の割球の動態や細胞内のアクチンの動態についてマウス胚とヒト胚を比較しながら観察しています。(ちなみにここで出てくるNewton numberやkissing numberというのは、空間上に球体が密集した際に何個と接することができるか?という古くからの物理的問題のようです。)また、ヒト胚盤胞期胚における内側の細胞と外側の細胞の間期の長さや染色体分離エラーなどを観察し記述しています。最後のFigure 6では、ヒト胚盤胞期のtrophectodermで、cavityができることによる圧力が要因で、核の一部が出っ張る現象(budding)が見られたそうです。そして、このbuddingは、いわゆる着床前診断の際にtrophectodermの一部をbiopsyする際にも生じていることを見出していました。このbuddingが微小核(筆者らはcytoplasmic DNA structureと呼んでいますが、要するに大き目の微小核)の要因となることを観察しています。

本論文の多くは、イメージングにより見られた現象を記述している形式であり、しかもそれら多くはすでに知られている現象が多いように感じます。例えば、内側と外側の細胞周期の非同期性や、染色体分離エラーと微小核形成の頻度などは、以前から多数議論されてきたのではないでしょうか?この論文の唯一の新規な発見としては、筆者ら自身がタイトルにしているように、Figure 6の、Biopsyの際に核が潰されてbuddingするという点だと感じています。その点についても現在広く行われているPGTAの解釈との関連について検証しているわけではなく、今後の課題と捉えているようです。

以上から、この論文のデータは10年前くらいでも成り立つ内容と思われ、個人的にはそれほど学ぶべきところは無かった論文でした。本論文には、実は実験条件に関して多くの懸念がありましたので、まずはSPYシリーズを試すついでに、いろいろと検討してみようと思います。

ご紹介、ありがとうございました。 また議論させてください。


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